【誰にでもあります】気分が落ち込んだ時こそ体を動かそう【書籍から読み解きます】
行動経済学に注目していて運動習慣を作るという点でも有効に作用させることができるのではないか、という記事を先日書きました。
【これは有益】フィットネスにも使える行動経済学の考え方
更に心理学や脳科学と運動についても注目しています。
ざっくりいうと、
【行動経済学】→ 人間の考え方の特性を理解
【心理学】 → 今の自分をどう認識しているかを理解
【脳科学】 → 細胞レベルで運動が起こす変化を理解
こんな内容をもっと知りたいと思い、ほんとに少しずつですがそんな本を読み進めています。
運動がからだに良いっていうことは、その真偽の程は置いておき多くの人が聞かされている内容ですよね。その類の情報がこれだけ出回っているのに、いつまでも運動習慣を持つ人を増やしましょう的な局面から変化が無いと思うのは私だけでしょうか?目新しさがなくなり、スルーされている気もします。
「からだにいいから運動しましょう。」では訴求できていないと思うんですよね。「分かっちゃいるけど、できない、やらない」っていう人が大半の中、どうアプローチすれば運動することのメリットを自分事として捉えてもらえるかを考えて仕組み化していくことが大切なんじゃないかと思っているところです。いかに気持ちを動かすか、同じ出来事を違う視点から見て認識を変えるきっかけを作るかが大切だと思っています。
この中で、今回は脳科学、「うつと運動」について掘り下げてみます。
この本を読んでいます。運動したくなります。

第1刷は今から10年以上前、2009年の本です。ずっと存在は知っていて読んでみたいと思っていたのですが、手つかずにここまできていました。つい最近の本だとばかり思っていたらこんなに時間が経ってしまった…結論から言うともっとはやく読んでいればよかったです。エビデンスをしっかり示しながら展開されているので根拠から知りたいと思う人にはいい内容だと思います。
運動することで脳内の環境がどう変化して、実生活にどういうポジティブな変化が出るのかが書かれています。学習効率が上がったり、気分が穏やかになったりと魅力的なことがたくさん書いてあります。しっかり心拍数を上げることが大切で、その作用が仕事の作業効率も上げるとあります。昼休みの運動なんかも奨励していますね。
こんな内容を読むと体を動かしたくなります。
本書の章立ての一つとして、うつについてのものがあります。
気分、気持ちが生活に与える影響は絶大です。気持ちの浮き沈みが同じ事象を良くも悪くも見せると思います。気持ちが落ちていると必要以上に悲観的になったりしますよね。こんな状態は誰にでも起こり得ます。多くの場合、それは一時的なもので収まることが多いのですが、繰り返されるその刺激と不安などのネガティブな感情とが紐づくと誤った神経回路が作られます。その誤って構築された回路が次々に刺激されネットワークが強化されてしまうと、うつ病となってしまうようです。
細胞のコミュニケーションレベル(どの神経細胞同士が情報をやりとりするか)でエラーが起きています。これって自分の意思でなんとかできるレベルを超えていますよね。個人の性格や考え方、周囲の反応など様々な要因が重なって、脳がそういう回路を作ってしまうんですね。異変を自覚できるころには、その誤った回路はかなり強化されている状態です。
その誤ったネットワークを根本から解消しようとするのが薬物療法であるわけですが、同じ作用が運動でも起こせることが分かっています。かなり前の研究になりますが、1999年アメリカのデューク大学で行われた【SMILE】というかわいい名前のこの分野では有名な研究をご紹介します。
運動することにより、うつ症状は大幅に改善します

まずは、この【SMILE(正式名称:Standard Medical Intervention and Long-term Exercise/標準的な医学的介入と長期間運動)】の内容をざっくりレビューします。参考サイト(英文):https://today.duke.edu/2001/01/exercise119.html
抗うつ剤の服用と運動介入との違いを見る実験でした。
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内容
・運動とSSRI(選択的セロトニン取り込み阻害薬)の効果を16週間に渡り調査
・うつ病と診断された156名の患者をSSRIグループ、運動グループ、SSRIと運動グループの3つに分けた
・運動グループは、週3回、30分間、監督下で有酸素運動能(おそらく最大心拍数)の70~85%強度でのウォーキングかジョギングを実施
結果
・それぞれのグループでおよそ半数の患者の症状が完全に消失
・13%は症状は緩和したものの完全には治らなかった
運動には薬と同じくらいの効果があると結論付けられた。
更に調査の6か月後、協力してもらった患者を追跡調査した。長期的に見ると運動の方が薬より効果があった。
うつが治らなかった人は、運動グループで30%、SSRIグループで52%、SSRIと運動グループで55%だった。
更に最初の調査で症状がなくなった患者のうち、症状がぶり返したのは運動グループで8%だったのに対し、SSRIグループでは38%に上った。
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こんな内容です。
どんな介入でも半数は症状が改善するんですね。結構割合が高いと思いました。注目すべきは長期的な効果でしょうか。
運動による効果の方がより長く保つことができるというのはとても価値の高い結果だと思います。この実験の紹介の中で、薬と運動の効果が現れるタイムラグについても言及されています。薬の方が早くしかも劇的に作用するようなんですね。運動で同じ効果を出すためにはもっと多くの時間を要するようで、継続必須です。その代り効果は長く残ります。
薬と運動、一長一短ありますが、最終的に治ったと認識できるのは長期的に安定した状態を手に入れることですよね。
それならば、SSRIと運動を組み合わせたグループが双方から一番多くのメリットを受けそうなのに、ふたを開けてみると結果が一番良くなかったのはなぜなのでしょうか?それについても言及されているので紹介します。
理由として考えられることとしては、薬に対する態度が作用したとのことです。薬をどう扱うかは人それぞれですよね。今回の実験でも、薬に対してネガティブな考えを持つ患者が含まれていて、運動でうつを治すと聞いて参加したのに薬を使われたことがその人のモチベーションを下げたことを実験主催者も認めています。実際に薬が運動効果を妨げていると感じている人もいたそうです。
すごいと思うのは薬の生理学的な作用を超えて薬の服用が負い目となり、運動で得られるはずだった自信が目減りした可能性があるということです。
『運動プログラムは大変だったけど、一生懸命に取り組みうつに打ち勝った!』という成功体験を得られず、『薬に頼って症状を抑えた』と解釈したのかもしれないと考察がありました。
「病は気から」ともいうように、気の持ちようで結果は全く変わるのかもしれません。本人の達成感、自信の高まりがいかに大切かが見て取れます。
まだまだ認知され切れていない

10年前の情報なので現状はまた変わっていると思いますが、【SMILE】に代表されるように運動の脳や心に対するポジティブな結果が多く示されてもなかなか医学的にそれを受け入れてもらえない現状があるということです。
先にも書きましたが、薬の方が早期に劇的に効果を出します。それに対し、運動では多少の即時効果はあるにせよ同じ期間での成績は劣っているように見えます。長期的に見れば成績はいいのですが…
他にもパニック障害などでは発作を起こす際に呼吸数や心拍数が大きくなります。その時の状況と不安な感情、心拍数上昇などの生理的な反応が結びついて回路を形成し発作が繰り返されることで更に強固に回路が結ばれていきます。心拍数上昇が発作のトリガーになるかもしれないので運動が敬遠されていたところもあるようですが、実際には心拍数が上がっても発作は起きないという事実を学習する効果で運動が作用するということも書いてあります。やはりここでも実際の成功体験が重要ですね。
本書で紹介されている実験はかなりの割合で高強度の運動を推奨していて、週間の消費カロリーも1400Kcal程度(毎日45分程度のジョギングに相当)とかなり高頻度で積極的な運動量を提示しているものもありました。
誰にだって起こることです。心の健康を保ちましょう。

繰り返しますが、うつ病とまではいかずとも、うつ状態になることは生きている限り必ずあります。誰にでも起こることであり、それが継続される環境にあれば誰でもうつ病になる可能性はあるということです。自分の心ですが実体が見えない分、私たちには分からない部分がまだまだたくさんあります。それでも、心の健康はどうやらからだを動かすことで保てるのではないかということが明らかになってきています。
もちろん、これが全てではありません。どんなことでもいいので、あなたがよりよく生きるための手段を見つけらるといいと思います。それを通して、自己効力感、自己肯定感、自信を身に付けることができればいいですよね。誰かと比べるのではなくあなたの中で納得できるといいですよね。
【体験実証済】筋トレで自己肯定感は確実に上がります
この記事があなたのもやもやを少しでも解消できることを願います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回題材にした本はこちら↓
脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方

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