【プライオメトリクス】”腱トレ”してバネのある瞬発的な動きの質を高めよう
プライオメトリクスという言葉をご存知ですか?
スポーツのためのトレーニングシーンでよく使われるものですが、俗にいう”バネのある動き”がこのイメージに当てはまります。
バネのある選手は上手に反動を利用して自分の力でジャンプする以上の高さまで飛ぶことができるんです。この瞬発的な動きを可能にするのは、”腱”の性質と”SSC”を最大限利用できるかに掛かっています。
今回は、パフォーマンスアップに焦点を当てて解説してみます。
短い時間で大きな力を発揮する

スポーツの動きはそのほとんどがとても瞬発的なものですよね。ゆっくり動くことが有利に働くことは無いと言ってもいいと思います。相撲やラグビーのスクラムを傍から見ていると動きがなくスピードを感じませんが、お互いに瞬発的で大きなをぶつけ合っています。向きが反対同士で拮抗している力がぶつかり合っているのでほぼ動かないんですね。
速く走ったり、高く遠くへ跳んだり、物を遠くに飛ばしたりといった瞬発的な動きは「短い時間でどれだけ大きな力をだせるか」に掛かっています。分かりやすく言えば、地面に足が付いた瞬間に自分の持てる最大パワーを発揮したいんです。その能力を高めることができるのが今回紹介するプライオメトリクストレーニングです。上手くできれば1回2回と連続ジャンプを繰り返すごとに高さを増幅することが出来るんですよ。
凄すぎて参考になりませんが、単純に見ていて面白いので貼っておきます。上手く反動を利用できるとこんなに跳べるんです。
なんでそんなことが出来るの?

何故そんなことができるのか?と思いますよね。自分の筋力で発揮できる以上のジャンプ高が出せるのって単純にすごいことだと思います。
これを達成するためには、
・筋肉の伸長反射という性質を利用する”SSC”とタイミングを合わせること
・ほとんど伸びないバネである”腱”の反発力を利用すること、着地の衝撃を吸収しすぎないこと
これらの要素を満たすことが必要です。
それぞれ簡単に説明します。
SSC(ストレッチ ショートニング サイクル)

先程から出ている”SSC”は「Stretch Shortening Cycle」の頭文字を取ったものです。日本語を当てはめると”伸長短縮サイクル”となります(サイクルはそのままです。笑)。
SSCを理解するためには筋肉の伸長反射という性質を知る必要があります。
筋肉は長軸方向(筋肉の起始から停止に向かう方向)に急激に引き伸ばされると筋肉の損傷を防ごうとする反射が起きて収縮してそれ以上伸ばされないようにする機能が備わっています。これはからだを守るための機構であり自分の意思ではコントロールできないものです。似た反射ではゴルジ腱反射というものもあります。こちらは腱(筋肉を骨とつなぐ部位)が伸ばされたと感知すると腱が切れてしまうのを防ぐために筋肉が緩んで腱のテンションを落とそうとする反射です(こちらは例外もあるので後程詳しく説明します)。
話を伸長反射に戻します。
プライオメトリクスにおいてこの伸長反射を利用するのは定石となっています。高く跳ぼうと思うと必ず1度沈み込みますよね。低くしゃがんだ状態から跳びあがろうとするはずです。これも伸長反射を利用しようとする表れです。しゃがんで脚の各関節が曲がるとその動きに伴ってジャンプで力を発揮する筋肉が瞬間的に引き伸ばされます。この時伸長反射が起こり筋肉は縮まろうとします。この反射で起こる収縮のタイミングで筋肉に力が入ったら(筋肉が収縮したら)より強い力が出せそうな気がしませんか?引く伸ばしたゴムが勢いよく元の長さに戻ろうとする感じです。
この伸び-縮みのタイミングを”SSC”と呼び、「ジャンプのタイミングと同期することで高いパフォーマンスを出しましょう。」というのがプライオメトリクスの大枠です。
腱トレしよう

”筋”ではなく”腱”です。腱を鍛えてみましょう。鍛えると言っても筋肉のように大きくしたりするのではなく、腱の弾性エネルギーを効率よく使えるようにするイメージです。腱の部分は筋肉を包む筋膜が束ねられて骨に付着する部分を作っています。特徴としてはほとんど伸び縮みしないということが挙げられます。つまり筋肉よりも硬いイメージです。硬いバネって反発もすごく大きく、初めの形を保とうとする力が強いですよね。その性質を利用します。
その為には足が地面に着く直前に筋肉に力が入り、腱を少しだけ長くした状態を作っておくことと着地の衝撃で筋肉の長さが変わらないように力が入った状態を保つことが重要になります。着地の衝撃で筋肉が引き伸ばされてしまうと筋肉が伸びた分衝撃を吸収してしまい、硬いバネである腱が十分に反発することが出来なくなってしまうんです。連続ジャンプや反動を利用する際、その着地の衝撃に負けない準備が必要になります。
次に簡単なエクササイズ例をいくつか挙げます。
具体的なトレーニング例
動画で示しますが、ザッとテキストで解説しますね。難易度順に以下の4つを挙げました。
アンクルホップ
膝、股関節を曲げることなく足首で跳ねる動きです。接地時間を極力短くして、着地の反動を次のジャンプに利用し1回目より2回目、3回目の方が高く跳ぶようなイメージで行います。
ボックスアップ
床から台の上に飛び乗るジャンプです。これも反動を利用できるように深くしゃがみ過ぎないこと、しゃがむ時より速く伸び上がることを意識してフワッと浮き上がるようなイメージを持って動いてみましょう。台の上に真上から着地するようにできると反動を最大限利用してジャンプ高に反映させる感覚が身に付きます。
ドロップジャンプ(デプスジャンプ)
少しずつ難しくなってきます。次は、台の上から床に飛び降りた反動を使ってジャンプします。こちらも着地の衝撃を吸収しすぎないように、接地した瞬間位は跳び上がるようにイメージしましょう。高い所から低い所に動いた時の位置エネルギーを利用します。上手にできれば床でジャンプするよりも高いジャンプができるようになります。衝撃を受け止めて瞬間的に動くのでフォームが崩れやすかったり、ケガにつながるリスクも上がりますのでご注意ください。
ハードルクリアランス
垂直かつ水平に重心移動しながらジャンプを連続します。1回目のジャンプをミスすると2回目が跳べなくなるので1回ずつの質がポイントになります。次のジャンプのための準備、1つ前のジャンプの反動を利用する感覚が重要です。
ケガには注意
トレーニング例でも少しだけ示しましたが、瞬間的に大きな力を受け止めるリスクは高いのでその点は注意です。余裕を持った高さから始めるようにして徐々に強度アップしましょう。少しずつ条件を上げていくことで筋肉や腱などの組織もその強度に順応してきます。
ケガの好発部位としては筋腱移行部が多い傾向にあります。伸び縮みしづらい腱成分のみだったところから伸び縮みする筋肉に変わるあたりですね。この部分はどうして強度が違うものが接しているところなので構造上脆くなりすいです。どんな筋肉にも腱は存在するのですが、特にアキレス腱付近は痛めやすい部分になるので以下の部分に痛みが出たら要注意です。
更にプライオメトリクスにおいては通常の反射機能に抑制が掛かることもわかっています。通常、筋肉や腱が急激に引き伸ばされるとその組織の損傷を防ぐために無意識に筋肉が自分自身の張力を変化させケガのリスクを下げようとします。
例えば腱が急激に伸ばされるとゴルジ腱反射が起き、筋肉が緩んで腱の長さを一定に保とうとします。こうなるとケガのリスクは下がるのですが、毎回反射が起こり筋肉が緩んでしまうと先に紹介した腱トレができなくなります。腱の反発力が利用できなくなりますからね。だから、意識的に行うプライオメトリクスなどの動きの場合、これらの反射は働かないように出来ています。意図した腱の伸長は関知しないように出来ているんですね。これも優秀なシステムだと思います。
短い時間で大きな力を出す=スポーツパフォーマンスアップ

冒頭を繰り返しますが、スポーツにおいてゆっくり動くのがメリットな場面はほぼないと言っていいと思います。瞬間的に高い出力が出来るようにトレーニングしていくことがパフォーマンスを高める大きなポイントです。そのための1つとして、今回はプライオメトリクスを紹介しました。瞬間的な強度が高いエクササイズが多いのですが、この能力はスポーツレベルの高い人だけのものではありません。色々なスポーツシーンに有効に使えそうです。
マラソン選手にプライオメトリクストレーニングを実施するとそのパフォーマンスが有意に向上したとする報告もありますので、日常的にランニングする方もウォーミングアップでアンクルホップなどを取り入れてもらうと更に気持ちよく走れるかもしれません。
競うだけがスポーツじゃないですからね。より楽しく続けられる方法が見つかることを祈ります。
最後までお読みいただきありがとうございました。

