【疑問】サーキットトレーニングって痩せるの?論文からひも解きます。【結論:痩せます】
特別な道具を必要とせず、手軽にサクッとできてしまうトレーニングの代表格と言えば、サーキットトレーニングですよね(もちろんフリーウェイトやマシンを使ってもできます)。自体重を負荷にするエクササイズを4~5種類用意して休みなく繰り返せばOKです。筋トレの間にジョギングなどの有酸素運動を挟む手法をスーパーサーキットトレーニングと言ったりもします。名前からして益々効きそうですよね。
【サーキットトレーニング ダイエット】とかで検索すると、短時間のワークアウトで大きな効果を謳う動画も結構ヒットします。きっと、多くの人がサーキットトレーニングに期待するのはそういう部分なんですよね。そして、効果が現れて有益だと判断されたからこそ検索上位にそういう動画が上がってくるんじゃないかと思っています。
今回は、サーキットトレーニングって痩せるの?痩せるとしたらどのくらい痩せるの?っていう疑問に対する答えにいくつかの論文から迫ってみたいと思います。
体重減少は間違いなさそうです

結論から言うと、サーキットトレーニングによって体重減少が起こることは間違いなさそうです。この点は非常にうれしい知らせですよね!
ただ、全ての人がこの一般論に当てはまる訳ではないのであくまでも論文ベースでという条件は付きます。ミクロに一人ひとりを見ていけば頑張ったのに変化しなかった人がいてもおかしくはないです。実際に今回取り上げた論文の中にも変化しない、むしろ増加したという人もいました。あくまでも平均値が下がり、統計的な有意差が確認できたということですね。
サーキットトレーニングの実施によって消費カロリーも増えるのでこの結果は当然と言えば当然です。もし、トレーニングしなければその分のエネルギーは消費しないわけですから。更に、トレーニング経験によって同じ内容のトレーニングでも結果は変わります。今までほとんど動いていないかった人が頑張ればガツンと減少する可能性は高いですし、これまでずっとトレーニングしてきた人はそこまで大きな変化は見込めないかもしれません。同じ人の中でもその日の体調によって、しっかりチャレンジできる日とそうでない日ができるでしょうし、結果は色々と考えられます。
色んな要素があるので一概に効果判定しづらいなというところもあります。実際にどのくらいの効果が出るのかをいくつかの研究を横断的に評価し結論を出した論文があるので紹介します。
メタアナリシスの結果、色んな数値が有意に減少しました

論文の中で最も信頼性が高いと言われているのが、複数の論文の結果を横断的にチェックして結論を出すメタアナリシスという手法です。どうしても1つの論文からだとバイアスが掛かったり、手法に偏りが出たりするのでどれだけ一般化できるか、本当に効果があったのかを判定するのが難しいんですよね。それを解消するための手法だとご理解ください。
そのメタアナリシスを使って、サーキットトレーニングによる数値の減少効果を見た研究(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31322317/)があったので紹介します。
内容としては、「9つの研究に参加した合計873人の18歳以上の成人に対し、サーキットトレーニングが体重とBMIをどの程度変化させるか確認した。結果は体重が3.81kg減少、BMI1.77減少した。肥満、過体重グループの体重減少が大きかった(減少量→肥満:5.15kg、過体重:3.89kg)、標準体重ではこの変化は見られなかった。」というものです。結構減っているように見えますが、それぞれのトレーニング実施期間やトレーニング強度が違ったり、そもそもの人種が違ったりするので注意が必要です。体重50kgの人にとっての3kgと100kgの人にとっての3kgは意味合いが変わってきますからね。
この他にも、小児肥満における有酸素と筋トレによる体組成の変化をメタアナリシスした論文(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25902557/)によると、「9つの研究から365人を調べた。8-24週のトレーニング介入で体重3.31kg、BMI1.05、体脂肪量5.05kg、体脂肪率1.93%減少したが、ウェストと除脂肪体重に変化はなかった。これらの変化は1セッション最低60分のプログラムを実施しての結果である。この介入により体重や体脂肪量には有意な減少があったが、除脂肪体重の増加については有意差がなかった。スーパーサーキットのような介入が体重、体脂肪量を減少させることを示唆している。」という内容です。除脂肪体重≒筋肉量をしても差し支えないかと思いますが、この点についてはトレーニングによる介入が効果的だったとは言えないということですね。参加者の年齢がどの程度だったのか定かではありませんが、筋肉を大きくするほどの負荷は掛からなかったのかもしれません。
「筋トレの強度は消費カロリーを変化させるか」という興味深い内容をメタアナリシスした論文(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31674141/)も見つけましたが、最適なトレーニング変数を示すには至らずという結果になっています。これが分かれば嬉しい人かなり多いんですけどね。今後に期待です。
97%の確率で体重の3%は減量できる方法はこれです

その中でも、結構具体的に数字を出してる論文も見つけたので紹介します。こちらは日本の論文(https://ci.nii.ac.jp/naid/120006879602)です。リンクから全文のPDFまで飛べますのでチェックしたい人は見てみてください。
見出しにある通り、この研究で実施した方法に近づければ97%の確率であなたの体重の3%の減量が見込めるというかなりリアリティを持ったものです。やはり数字の説得力は抜群ですね。体重50kgであれば、1.5kgの減量をイメージしてください。
論文の概要を説明します。
「7週間のサーキットトレーニング介入の結果をまとめたものです。愛知県のフィットネスクラブにおける「7週間ダイエットプログラム」に自由意志で参加した20-70歳代の女性77名に週に3回以下の低GI食、トレーニング前の特製ハーブティーを提供、45秒の油圧式トレーニングマシンでの筋トレ7種、各筋トレの合間に45秒の有酸素運動を実施し、これを2セット。1セッションを30分間とした介入です。7週間の平均体重減少量は1.7kg、7週間で平均利用回数21.8回、期間中97%の確率で体重の3%減を予想可能」というものです。
ローカルなフィットネスクラブのプログラムを土台にした研究ですね。トレーニング前の特製ハーブティーは必要だったのか?という疑問はありますが。笑
自由意志で参加かつトレーニング頻度も参加者に裁量があるようです。2か月弱のトレーニングで1.7kgの体重減少は結構嬉しいですよね。
注目点は、自由とは言え平均のトレーニング実施回数が期間中約21回というところです。…週に3回はトレーニングしているということですね。これって結構な頻度だと思います。経験上、この頻度で7週間続けられるのはすでにトレーニング愛好家レベルかと推測します。運動に苦手意識を持っている人が週に3回もトレーニングしたいと思わないですよね。それも仕事しながら時間を作るのって結構難しいです。しかも、「やるかやらないかはあなたにお任せします。」となったら、結構ハードルは上がりそうですね。
すごく具体的な数字を提示していて、イメージしやすいのですがそのラインに到達するには相応の努力が必要です。論文ではサラッと書いていますが、やっぱり何をするにおいても楽なことってないんですよね、きっと。この論文内容はトレーニングの頻度、その内容で結果が具体的にイメージできるのがとても有効ではあります。是非参考にしてください。
もちろんやり方で結果は変わります

例えば「10回×3セット」の形を真似るだけで結果が出るなら誰でもできますよね。でも同じ内容の運動をしているのに結果が出る人がいたり出ない人がいたりします。その違う結果をもたらす要素にはトレーニング強度が関係しています。前述の例で言えば、しっかり頑張って10回×3セットを消化する強度を保って行うのが大切です。それは他の誰かと比べるのではなく、あなたにとってその運動が楽なのか、辛いのかということですね。
もちろん辛ければ辛いほどいいわけではありません。それじゃ根性論になってしまうので。大体の人にとって、心拍数120前後の運動強度が少し辛く感じる程度と言われています。主観的にどう感じるかで運動強度を設定してもいいですし、定期的に運動中の心拍数を測定してもいいかと思います。もちろんどう感じるかには個人差があるので無理なく出来る範囲から始めてもらいたいですし、服用している薬の種類によっては心拍が上がりづらい場合もあるので不安があれば医師の判断を仰いでください。
この記事の冒頭に短時間で大きな効果を謳うワークアウトが結構な数ヒットすると書きました。覚えていますか?検索の上位に表示されるということは、ユーザーの利用頻度が高かったりしてGoogleが有用なコンテンツと判断したということです。つまりその内容でユーザーが効果を感じているということだと判断できます。
それらのコンテンツの見出しやサムネイルを見ると「たった10分で!」とか「1日6分」とか本当に短時間なんですよ。【サーキットトレーニング ダイエット】で検索してみてください。少しでも運動生理学などをかじった者としてはその短時間の運動で目に見える効果が出るほどのエネルギー消費をどうやって起こすのかがいつも疑問です。たった10分で数百~数千Kcal消費するような運動は不可能ですよね。心臓破裂しそうです。
逆に言えば、そのくらい短時間の運動でも効果が出るくらい普段のアクティビティレベルが低い人が多いのかもしれません。短時間でも運動することで、脂肪燃焼ではなく浮腫み解消で見た目が変わったということは十分考えられますし。今までやってなかった人が運動を始めることでビギナーズラックというか、トレーニングでの伸び代(トレーナビリティとも言います)が大きいのは間違いないですからね。希望的観測も含めてそんなところが大きいのかと推測します。あくまで推測の域を出ませんが、それだけ普段の運動量が少ない人が多いということはトレーナー業界においても今後の課題ですね。
体重は落ちます

まとめます。
運動強度、運動頻度、運動の量を確保してサーキットトレーニングを行えば体重は確実に落ちます。いくつもの研究がそれを裏付けているのでまず間違いはなさそうです。あとは妥協せずにその条件でしっかり運動できるかがポイントになりそうです。いかに頑張れる環境を自分に用意するかが大切です。誰かと一緒にやるでもいいですし、フィットネスクラブに通うことでスイッチを入れるでもいいでしょう。モチベーションが上がり、それをキープできる条件を整えて欲しいと思います。
いつだって効果を出すも出さないも自分次第です。取り組むメソッドが良い悪いは実はそこまで強い要因ではないと思っています。どんな内容でも結果を出す人は出しますからね。どう取り組むかが大切だと思っています。【マインドセット】運動出来ない理由はなんですか?【あなたに必要なのは“決断”です】
何かのせいにすれば楽ですよね。その思いは私にもあります。でもそうしたところで結果は何も変わらないんですよね。少し厳しい言い方になりますが、しない理由を考える前にエイっと始めてコツコツと動いた方がよほど生産的です。小さな積み重ねが大きな結果を生みますよ。
最後までお読みいただきありがとうございました。