【これは…】FMSでスポーツパフォーマンスは計れていない…!?【スクワットの相関係数がエグい】

先日、近藤拓人さんのツイートでこんなものを発見しました。色んな意味で「マジか…」な感じです。

リンクされていた論文にもアクセスして読んでみました。その内容を踏まえ、FMSについての「実はスポーツパフォーマンスとあんま関係ないこと」をまとめます。

ゴルファーのパフォーマンスにおいては、『FMS<スクワット』だった

この論文の結論としては、ゴルファー(Division1とあったので上位選手?)のスプリントタイム、垂直跳びの跳躍高、Tテストというアジリティテストのタイム、そしてクラブヘッドのスイングスピードといったパフォーマンスにおいては、FMSのスコアではなくバックスクワットの1RMとの関係の方が強いということが明らかになりました。

論文説明

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No significant correlations existed between FMS and 10-m sprint time (r = -0.136), 20-m sprint time (r = -0.107), VJ height (r = 0.249), agility T-test time (r = -0.146), and club head velocity (r = -0.064). The 1RM in the squat was significantly correlated to 10-m sprint time (r = -0.812), 20-m sprint time (r = -0.872), VJ height (r = 0.869), agility T-test time (r = -0.758), and club head velocity (r = 0.805). 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21964425/

簡単に論文の内容を説明します。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21964425/
特にスクワットとの関係で出てくる相関係数がエグいことになってるんで見てください。

FMSに対して、
・10mスプリント:-0.136
・20mスプリント:-0.107
・垂直跳び    : 0.249
・Tテスト     :-0.146
・クラブヘッドスピード:-0.064

スクワットの1RMに対しては、
・10mスプリント:-0.812
・20mスプリント:-0.872
・垂直跳び    : 0.869
・Tテスト     :-0.758
・クラブヘッドスピード:0.805

マイナスの相関は一方の数字が大きくなれば、対になる数値は少なくなることを意味します。スクワットの1RMが大きくなればなるほどスプリントのタイムは短縮するというわけです。

相関係数はざっくり0.7以上あるとかなり相関が高いと言えると認識しています。その中で0.8以上の相関ばかりってなかなか見ないラインナップになっています!

側方移動のパフォーマンスって実は股関節の伸展パワーが高いほど優れていることが分かっています。股関節の内転筋や外転筋の力じゃないんですよ。それで、ゴルフの動きについても体の移動こそしませんが一方の足から反体側の足への体重移動がパフォーマンスの要なので上の条件に当てはまるんです。おそらくですが、ドラコンやればスクワットの1RMと飛距離もかなり高い相関が出るはずです。クラブコントロールなんかのスキルの差は多少出るかもしれませんけどね。

今まで結構な時間をここに費やしてみたけど…

私を含め、この結論に衝撃を受けた方は多いんじゃないでしょうか?
書籍(https://amzn.to/2UODal4)も出ていて、今や日本中、世界中でそのセミナーがこれでもかというくらい開催されて来たものなのですが、こうなってしまうといったいクライアントの何を見ていたのかよく分からなくなりますよね…

数年前にはFMSのスコアとけがの関連は薄いという論文も出ています。FMSは7つの動きを「0~3点」で評価し合計の最高が21点になるスクリーニングです。この合計の数字が14を下回るとけがのリスクが高まると言われていました。しかし、この14という数字を境界値とする信ぴょう性が疑われていたり、けがとの関係が深いのはオーバーヘッドディープスクワットとハードルステップのみという結論を出している論文もあります。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31094624/

「たった7つの運動でからだの機能を全般的にチェックできるツールがあるとは…!なんて便利なんだ!」と思ったものですが、現状ではその見方も少し厳しいかもしれません。

色々な動きを分析した結果、あの7つに集約されているんだと思っていたのですが、あのテストでは多くのスポーツの実態をカバーできないということになります。(https://amzn.to/2UODal4

じゃあFMSには意味が無いのか?

「じゃぁ、FMSは意味ないじゃん。」って切り捨てるのは、また次に飛び付いた理論が破綻した場合、立場なくなるので本質的ではないです。FMSが7つそれぞれの動きに対してのスクリーニングであることは変えることのできない事実ですし、その動きの中で出てきたエラーが効率のいい動きの制限因子になっている可能性はもちろんあります。そして、シンプルにFMSの各動作ができるに越したことはないんですよね。

大切なのはFMSだけに頼らずにクライアントを見ていくことです。誰かの決めたルールに乗っかって長いものに巻かれた方が楽かもしれませんが、依存し過ぎないようにしていきたいと思っています。動きの特徴を捉えたり、目の前の集団をざっくりグルーピングするなどの用途には有用かと考えます。そういう意味では、どういう風に動きを捉えているのか?その原因や対処法をどのように考えているのかを知ることは大切だと思います。色々と勉強です。

今のところパフォーマンスを計るのにはスクワットを見ていくのが良さそう

そうとは言え、今回見てみた論文からはパフォーマンスを測るならスクワットをしてみる方が有効な手段っぽいは間違いないですね。FMSの動作スピードだったり、出力の強さは到底スポーツ動作時のそれらには及ばないのでやっぱり正確にパフォーマンスを反映させることは難しいですよね。もっと下層の要素を見ているものになるのかと思いますね。

スクワットは『King of exercise』と言われるようにスポーツ動作を含めた身体活動に非常に重要なものです。それを使って、改まった測定としてではなく普段のトレーニングの中でモニターしていくっていう関わり方が理想だと思っています。そこで得られた情報を補足するものとしてFMSを役立てられるといいのかもしれませんね。

これからどう発展していくのかに注目です。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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