【ウソのようなホントの話】何もしなくても筋力アップする!?クロスエデュケーション効果

先日、ディトレーイング(トレーニングを中止すること)に関するウェビナーを受けました。その中で、印象に残ったワードが「クロスエデュケーション」だったので、熱が冷めないうちにどんなものなのかをまとめていきます。ディトレーニングについてもその影響や生理学的にどんなことが起こるのかをまとめて近いうちに出していきたいと思います。今回はまず「クロスエデュケーション」についてです。

非トレーニング側で筋力アップする

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「右腕の筋トレをしているのに、左腕も筋力アップしている!」これがクロスエデュケーション効果です。もちろんトレーニング側の筋力アップ率の方が大きいのですが、およそ10%程度の筋力アップが非トレーニング側でも起こります。

実はこのクロスエデュケーションの歴史は結構古く、1894年に初めて提唱されました。もう120年以上前に現象としては確認されていたんですね。今では、この効果が脳卒中患者の麻痺側に対する筋力強化など医療の色々な場面でも活用されています。

どんな理論のものなのか解説します。

効果は色々

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収縮様式でのアップ率

クロスエデュケーションについてのメタアナリシスの結果を見ると筋力の増加率は、
上肢:+ 9.4%
下肢:+16.4%
と報告されていて、脚の筋肉の方が増加率が高いという結果です。

少し専門的になりますが筋収縮様式別に見ると、
アイソメトリック:+ 8.2%
コンセントリック:+11.3%
エキセントリック:+17.7%
という結果になりました。

壁を押すような関節の動きを伴わない力の出し方を”アイソメトリック収縮”、
重りを持って肘を曲げる方向に関節が動く力の出し方を”コンセントリック収縮”、
曲がった肘をゆっくりとブレーキを掛けながら伸ばしていく方向に関節が動く時の力の出し方を”エキセントリック収縮”と言います。

もともと出せる力の大きさは「 コンセントリック < アイソメトリック < エキセントリック 」の順番です。
スクワットでもしゃがめるけど立ち上がれないって言う場面がありますがこれがまさに好例です。同じ重さでもしゃがんでいくのはエキセントリック収縮で大きな力が出せるのでコントロールできるのですが、立ち上がるのはコンセントリック収縮なので発揮筋力が小さくなるからです。

クロスエデュケーション効果としては、この3つの中ではエキセントリック収縮が最も大きな値で増えてますね。組み合わせると下肢のエキセントリック収縮が最も高いパフォーマンスを出しそうです。このことはスポーツも含めて日常生活のあらゆる場面で役立ちます。脚の筋肉は地面方向に向かって作用する重力に抵抗してバランスを取ったり、姿勢を維持したりすることから抗重力筋と呼ばれています。崩れた姿勢を立て直してバランスを維持したり、強い衝撃を受け止めたりするのに必要不可欠なのが筋肉のエキセントリック収縮なんです。この機能がしっかりしていないとスムーズな動作が失われてしまうので超重要です。その部分がクロスエデュケーションで最も活性化されるので色々上手くできてるなと思います。

トレーニング後も筋力を維持し続けた

脳卒中患者に対する手首周りの筋トレを行ったクロスエデュケーションの研究では、トレーニング終了後5週間経過した時点でのフォローアップテストでも増加した筋力を維持したという報告があります。この結果がすべての人に当てはまるかどうかはまだはっきりしていませんが、一方の筋トレによってこれまでよりも活性化された反対側の筋活動レベルがきっかけになったとも考えられます。

「筋出力レベルが上がる → 大きな力を出せるようになる → 大きな力を発揮する神経回路が繰り返し刺激される」

こんな感じの順序で、ポジティブな循環が起きているんじゃないかと推測します。そうじゃないと5週間もの間、増加した筋力キープするのは難しいと思います。

神経系の適応?

この反応も含めて、神経系の関与が大きいというのが大方の見方です。実際に筋肉の大きさが変わったという報告は私が見た中では見つけられませんでした。神経と筋肉のつながりがより強まったことで起きた変化だと考えられています。

筋肉は脳からの電気信号を受けて収縮し力を発揮するのですが、その脳から電気信号を受ける筋繊維が多いほど大きな力を発揮できます。脳を起点にした神経回路は次々に枝分かれして全身にネットワークを築きます。1本の神経が何百という筋繊維とつながり、脳からの電気信号をやり取りしています。このつながりが筋トレによって強化され大きな力を出せるようになるのですが、クロスエデュケーションでは一方の筋トレで起きた筋肉と神経の回路強化が反対側の回路に転写されたとする見方が強いです。

この結果をどう利用するか

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このことは、ケガをしていても筋力低下を抑えられるということにつながります。積極的に動かしてトレーニングができなくても、健側(ケガをしていない側)をトレーニングすることで急激な低下を抑えて筋力を維持できる可能性が高まりますよね。

先にも書きましたが、脳卒中などの脳血管疾患後のリハビリにもこの効果は利用されています。一方にしか刺激が入らないと余計に左右差が大きくなると考えられてこれまで脳卒中での麻痺に対しては麻痺側にアプローチすることがセオリーだったそうなのですが、このクロスエデュケーション効果を使ってリハビリを行うこと場合が増えているという情報も散見されます。https://ameblo.jp/errcjapan/entry-12331272941.html

十分にトレーニングできずとも、少なからず変化を及ぼせるという事実は医療を含めて多くの場面でポジティブな要素になりそうです。

筋力が減った報告もある?

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ただ、調べていると決して万能ではない部分も見えてきます。反対側の筋力が減少したとする結果も報告されています。

この実験(https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2000.27.2/0/2000.27.2_195_1/_article/-char/ja/)では、トレーニング側と非トレーニング側のもも前ともも裏の筋力を筋トレ前後で比べています。クロスエデュケーション効果を確認した方法としては、一方のもも前の筋トレが反対側のもも前の筋力をアップさせたとする報告が多いのです。それに対して、この実験では非トレーニング側のもも裏の筋力アップが確認されるという結果になりました。反対側の裏側なので最も遠い位置関係で大きな変化が出たようなイメージですね。これも面白いと思います。

考えられることとしては、トレーニング側のもも前がより大きな力を発揮するためには土台となる骨盤の安定が欠かせないはずです。その骨盤の安定を非トレーニング側のもも裏の筋肉が強く収縮することで作っていたのではないかと思われます。こう見ると、一つの動きを出すための仕組みもなんとなく予測できそうですよね。実は意識していないだけで、色々な部分が協調して動きを作っているんですね。

話を戻します。
肝心の非トレーニング側のもも前の筋力は若干低下しました。でもこの結果は別に驚くことでもないかと思っています。トレーニングしていないのに筋力がアップするというのがボーナスみたいなものなのでトレーニングしていなければ筋力低下が起こることは当然のことと受け入れられるかと思います。実験した集団の特徴など色んな条件で結果は変わってくるでしょうし。ネガティブな情報も併せて載せておきますね。

この結果を有効活用しよう

まとめますと、「トレーニングをしていない側でも筋力がアップする!」というのが、最大のトピックでありこの記事でお伝えしたいことです。

もちろんその増加率には、ばらつきがありますし、増加しない場合もあることは想定した上で利用する必要があると思います。それでも可能性としてこんな効果があるということを知っているかどうかでアプローチは変わってきますよね。麻痺に対するトレーニングなどでの活用がもっと増えて、一人でも多くの人の生活がより良くなるといいなと思います。ケガからの復帰などにも大いに利用できそうですし、トレーニングの幅も広がりそうでうすね。

どのくらいの量でどう変化するかなどの具体的な変数はまだまだこれからの課題です。この効果が現れる機序も専門的で分かりにくいかもしれませんが、現象としてどちらの筋力もアップすると覚えてもらえるといいかと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考資料
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28936703/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29668382/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17043329/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29730752/

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