【徹底解説】質の高いスクワット ~本当に膝はつま先よりも前に出てはいけないのか~
スクワットをする時の注意点と言えば…
ご自宅でも簡単にできるエクササイズの代表スクワット。特別な器具を使わずに行えるので畳半畳ほどのスペースがあればどこでもできますね。
また立ち上がり動作、段差の昇降など日常生活にも似た動作が多く、その必要性はとても高いといえます。
どこまでしゃがむか、どんな足幅でやるかのバリエーションも非常に豊富で目的に応じて取り入れられるものとても便利なところです。
筋力トレーニングの中では『BIG3』と呼ばれる3つの種目の中の1つです。
古代ギリシャの時代から何千年も忘れられることなく継承されてきた伝統ある種目でもあります。
それだけ続いているということだけ取ってもその恩恵に預かるところが大きいことが分かります。
やっても効果が出ず、ケガをするなら現代まで残っている訳ないですからね。
『King Of Exercise』とも言われ、是非あなたにも積極的に実践して頂きたいエクササイズです。
そんなスクワットでよく耳にするのが
膝はつま先よりも前に出してはいけない
あなたも1度は聞いたことがあると思います。
でも、これって本当でしょうか?
幅広く受け入れられ、もはや疑いようのない注意点として広まったこの定説。
何故なのか、そのデメリットは何なのか、今回はここに切り込んで解説します。
膝を出してはいけない理由は?
そもそも何故こんな話が出てきたのか。まずはそこから。
いきなりですが、物理学の話を少々。とは言え僕の専門ではないので僕が理解している言葉で伝えます。使っている言葉の違いについてはご容赦ください。
– 重心と支持基底面 –
重心というのはとても簡単に言うと自分の体重の中心。直立姿勢だと、へその辺りに該当します。
支持基底面は自分の体重を支える面のこと。
両足で立った場合はつま先同士、踵同士を結んだ辺と両足の外側を辺にした四角形がそれに該当します。片足なら地面に接している足裏の面積が支持基底面になります。だから片足立ちは難しい。両足で立った時の半分以下の支持基底面ですからね。
そして重心が支持基底面の中に収まっていないとバランスを維持できません。転倒します。
ご存知の通り地球には重力があり、常に全てのものを地球の中心つまり地面に向かって垂直に引き寄せています。もちろんあなたの重心にもその力は作用しています。重力の引き寄せる矢印の先に支持基底面があれば重力に引き寄せられる力は打ち消されバランスは保たれます。ただ矢印の方向と支持基底面が一致しない場合は支えになるものが無いので支持基底面を軸にした回転が起こり転倒します。
普段意識はしていませんが、体は常にバランスを維持するために支持基底面内に重心を収めようと微調整を繰り返しています。
それはスクワットの時も例外ではありません。関節が動き、体が上下動を繰り返す最中でも重心を必ず支持基底面の中に収めなければいけません。そこで次の話がポイントになります。
– 力のモーメント –
モーメントとは回転させる力のこと。
回転の軸から重さの掛かる点までの距離とその重さの掛け算で表します。つまり重たくなればなるほど、軸から遠くなればなるほど回転させる力が強くなります。
スクワットにこの点を落とし込むと
重心(重さの掛かる点)と股関節、膝、足首(回転の軸)それぞれの距離の違いで掛かる力の強さが違うことを示します。支持基底面内に重心を収め続けるために重心から遠い関節ほど大きな力発揮が必要で関節にも大きな負担が掛かる訳なのです。
スクワットのフォームを横から見ると分かりやすいのですが、図のようなフォームになる方が多いです。
- 股関節は重心に近くモーメントが小さくなりやすい
- 膝関節は重心から遠くモーメントが大きくなりやすい
長くなりましたが『重心』、『支持基底面』、『モーメント』の3つのキーワードをまとめます。
重心を支持基底面内に収めるために下肢の各関節を曲げる
↓
関節に掛かるモーメントに大小がある
↓
膝のモーメントを小さくして負担を減らすことがケガをせずにスクワットするには必要
↓
膝の前方移動を制限する必要がある
↓
膝をつま先から出してはいけない
- という部分だけが切り取られ、誇大に広まってしまったと考えられます。
じゃあ、スクワットってどうやるの?
でもスクワットってしゃがみ込む運動ですよね?
しゃがむってことは足首だって曲がりますよね
そしたら膝はつま先より前に出ませんか?
足首を曲げずに脛を地面に垂直に立ててしゃがむのは難しい…と言うか必ず後ろにひっくり返ります。
膝を出してはいけないと考えるばかりに接地部分が踵に寄りまくり、
つま先が浮き上がるのを必死にこらえて浅いスクワットをしている人がとても多いのが現状なんです!
そうするとどうなるか。
後ろに倒れないようにももの前の筋肉が強く収縮します。
↓
膝に負担が掛かります。
ん?
膝に負担を掛けないためにつま先より前に出さなかったんですよね?
結局膝の負担大きくしてる\(^o^)/笑
つまり膝をつま先から出すか出さないかはあまり大きな問題では無いのです。
大切なのは股関節をたためているかどうか、背中が丸まっていないかどうかです。
- 胸を張って肩甲骨を背骨側に軽く寄せます
- 椅子に座る要領でお尻を後ろに引きながらしゃがみます
- 体重を感じるのは足の中央、足の甲の盛り上がった部分に置き続けましょう
- 横から見た時に脛の骨の傾きと背骨の傾きが平行になるようにすると重心の位置が安定します
それでもつま先が浮いたり、膝が痛い場合もあります。関節の可動域や膝の状態は人それぞれですからね。
そんな時は踵を5cmほど高くして行ってみると効果的です。つま先下がりにしてつま先側に荷重しやすい状態を作っています。荷重が安定しますし、前方に倒れないようにお尻を引いて股関節をたたまなければいけない状況を作っています。
タオルを何回か折りたたむか丸めて厚みを作ると手軽にできます。お試しあれ。
以上、僕の考えるスクワットのポイントでした。
少しでもあなたのトレーニングライフへのプラス要素になれば良いなと思います。
もちろん膝をつま先より出さない方が有益な人も存在します。あえて踵側に荷重して行う必要がある場合も考えられます。やはりどんな目的でスクワットをするのかが大切です。
僕が話してきたことが全てではありません。
0か100かでは無く、みんながそうしているからでもなく、あなたがどうなりたいのか、どんなものが必要なのかを考えてトレーニングを組み立てることが大切です。
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