トレーニングすればするほど分からなくなる…それ、ダニングクルーガー効果ですね。成長の証拠です。
一口に人間と言っても本当に色々な人がいますよね。
人種や文化が違えばもちろん考え方も全然違って、
びっくりするような場面に遭遇することは
簡単にイメージできます。
そこまで大きな話でなくとも、
生きていれば色んな人と接点を持ちますよね。
例えばあなたが何か質問したことに対する
回答の印象が、
・とても自信が溢れている人
・何となく自信なさげで歯切れの悪い人
・何を言っているのかよく分からない人…
色々あると思うんです。
上に挙げた3つの回答であれば、
間違いなく自信を持って回答してくれる人の
話を採用しようと思いますよね。
その内容があなたの考えを支持するものであったり、
あなたを納得させるものであれば採用の可能性は
グッと上がるとも思います。
バシッと言い切ってくれると
それだけでとても魅力的に見えますからね。
ただ、ここにあえて釘を刺しますと、
”自信の強さ=情報の正確さ”とは限らないです。
実は物事の表層を触っただけの言わば素人の方が
根拠のない自信を持ちやすいということが
科学的にも言われています。
今回は、その点とフィットネス、トレーニングを
絡めてお話していこうと思います。
ダニングクルーガー効果
経験、能力が低い人ほど
自分の能力を正確に評価できないって知ってますか?
この関係性には【ダニングクルーガー効果】と
言う名前が付いています。
めちゃくちゃ辛らつに言えば、
身の程を知っているかどうかということです。笑
手にすくった水を見て、海を語るようなものですかね。
井の中の蛙、無知の知と言い換えることが
できるかもしれません。
どんな人でもおそらくこの過程をたどります。
情報量が少ないので迷わないという点が
自信につながるんですよね。きっと。
知れば知るほど、「言い切ることってできないよな…」
と思う場面が増えると思います。
このことについては後の章で改めて詳しく書きます。
こんな研究があります
もう20年以上前に発表されたものです。
1999年にダニングさんとクルーガーさんの共著で
発表された論文で取り上げられたので
ダニングクルーガー効果です。シンプルですね。
論文の内容を追ってみます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10626367/
タイトルには
”過大な自己評価に対して無知を認識するのがいかに難しいか”
とあります。
無知を認識するってとても難しいですよね。
普通、人は自分の能力を高く見積もりたくなるものです。
この過大評価は、間違った結論に達し不幸な選択をするだけでなく、
課題を実現させるためのメタ認知能力を奪っているとも言っています。
メタ認知とは自分を客観的に見るということです。
これもまた難しいですが、人からの視点で自分のことを
考えられるかどうかということですね。
メタ認知することで、自分の立場を理解する精度が高まります。
この研究では、参加者のユーモア、文法、論理のテストを行いました。
スコアを上位から4等分して調べていくと、
最もスコアの低かったグループが彼らのテスト結果や能力を
過大に評価していたことを発見しました。
実際のテストのスコアが正答率12%であっても、
自分自身は62%できていると自己評価していたんです。
逆にこの傾向は、参加者のスキルを高めることで改善し、
メタ認知能力を高めて能力の限界を認知しやすくなったとしています。
もう一つ論文を挙げます。
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1745691613518075
”自身の能力に対する洞察を持っていることは必須だが、
多くの人が自身の能力を的確に見抜いているかどうかは
まだはっきりしていない。”とした上で、
・学術能力
・知性
・語学力
・医療スキル
・スポーツ能力
・職業スキル
の自己評価と、
・テストのスコア
・成績
・管理者からの評価
の客観的なパフォーマンス指標の間の
対応があるかどうかを
22のメタアナリシスを横断して調査しました。
かなり大規模です。
更に、何がこの関係を適切にするかも検討しました。
個別のメタアナリシス効果量は0.09-0.63の範囲にあって
かなりばらついています。
ほぼ関係ないとしている論文もあれば、
かなり関係が深いとする論文もあるといった感じです。
全てのメタアナリシスを横断した
自己評価能力とパフォーマンスアウトカムの間の
平均相関は中程度でした(M=0.29、SD=0.11)。
・特定のごく限られた範囲
・タスクを見慣れている
・タスクが複雑ではない
これらの条件の時に正確に自己評価できる傾向にありました。
まとめると、
これらの発見は多くの人は自分自身の能力を
ある程度は客観的に評価できていて、
より限定的で慣れ親しんだシンプルな要素に対しては
より正確に自己評価できることを示唆しているようです。
これは感覚的にも理解できますよね。
全く未知のものに対してよりも
経験があって分かりやすいものに対しての方が
正確な自己評価ができそうです。
知れば知るほど分からなくなる
少しフィットネスシーンから具体例を挙げてみます。
完全に私もはまっていたんです。ダニングクルーガー効果に。
当時の自分に伝えてやりたいです。
経験や知識の浅いはずの人が大きな自信を持って
全てを分かったような状態になってしまうのは
ある意味必要なことです。
全てはそこから始まります。
継続して情報を集め実践していけばいくほど、
思ったようにはならないケースにぶつかり、
当初の自信は息を潜めます。
それでも、継続して取り組むことで
少しずつ自信が回復してくるんです。
筋トレ1つ取っても
端的に言うと、筋トレをすればするほど
「これでいいのかな?」と納得できなくなる
ことありませんか?
私は結構あります。
しかも自分のトレーニングを繰り返す度に
その頻度が増えているとさえ思います。
皆さんにお伝えする側の立場でこんなこと言ってて
申し訳ないんですが、事実は事実なんです…
デモンストレーションでスクワットするのとかも
しっかりできてるかな?とか不安になります。笑
「あぁやるのがいいらしい。」とか
「こうやるとこの動きに効果的!」とか
色んな情報をインプットしながら
試すからかと自分では理解しています。
初見で理屈を理解して分かった気になる
↓
実際にやってみてイメージしたのとは
比べ物にならないくらいの情報量を得る
↓
少しずつ継続して、自分の納得いく形になる
多分これを繰り返してるのかなと思っています。
色々試す度に、
ダニングクルーガー効果の底を見て、回復して…
を繰り返しているんです。きっと。
そういう意味では、
常に自分の感覚をアップデートしている
ような状態なので”これでいいや”には
なりづらい環境を作れているかもしれません。
常に自分の感覚を疑っている感じですね。
疲れそうに思いますが、
一旦”こんなもんだな”と思うと
きっと考えようとしなくなりますよね。
それを放置することが、
いつの間にかフォームが崩れて
自己流トレーニングになってしまう一因でも
あると思うんです。
決してあなたに無関係な話ではないんですよ。
ただ、だからと言って自己評価を下げろと
言っているわけではないです。
「これじゃだめだ…」になりすぎると、
自己肯定感下がりますからね。
筋トレは自己肯定感挙げてなんぼだと思ってます。
【体験実証済】筋トレで自己肯定感は確実に上がります
自信はどん底でも継続する意味はあります
「なんでこんなに自信持てないんだろう…」
と思うこともあると思います。
でも裏を返せば、それはより多くのことを吸収して
自分の立ち位置を正確に把握できるようになっている
証のはずです。
みんなその過程を経て、
「全てが分かっているわけではないけど、こうだよね。」
と自分の言葉で表現できるようになるんだと思ってます。
そうなると、自分の限界を理解しつつ
最大限のパフォーマンスを発揮できる
大人な状態になれるかなーと思ってます。笑
逆に全てを分かったと思っている時は危ういと思います。
そんな時こそ、しっかり自分を客観的に見るように
心掛けたいです。メタ認知です、メタ認知。
本当に物事を理解するためには、
自分が対峙しようとしていることの
広さと深さに打ちのめされ
自分の小ささを自覚してからがスタートって
感じでしょうか。
絶望することもあるかもしれませんが、
本物になるためには誰もが通る道です。
色々と思い悩むのはあなたが今の状態よりも
良くなろうとしている証拠です。
やめてしまえば確実に何も起こりましません。
可能性0です。
本当に少しだけでもいいので
コツコツ継続できる形で
あなたの生活の中に残すようにした方が
絶対にいいと思ってます。
この考え方はそのまま運動習慣を作ることにも
当てはまりそうですよね。
実は半分以上自分にも言い聞かせてます。笑
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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